
2025年10月6日
~学校市場へ開拓を検討している企業様へ、学校が攻めにくい理由を公開します~
1. 日本の学校市場の潜在力
少子化が進む日本においても、学校市場は依然として大きな規模を持っています。
文部科学省の統計によれば、全国には約3万校の小・中・高校、さらに約800校の大学・短大が存在し、教育関連予算は年間5兆円を超える水準です。
※一般会計の文教及び科学振興費は5兆5,660億円https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202505/202505d.html
また、GIGAスクール構想の進展により、ICT機器や学習支援アプリ、AI教材などの導入が急速に進み、教育市場全体は拡大傾向にあります。
企業にとっては「安定した需要」と「公的予算による継続性」が魅力であり、新規参入や新サービス提供のターゲットとして十分に“ねらい目”と言えるのです。
※一人一台端末は令和のスタンダード
https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf
しかし、表面上の市場規模の魅力とは裏腹に、学校市場には参入障壁が多く、簡単に攻め込める市場ではありません。
以下では、その攻めにくさの要因を整理します。
2. 学校市場が攻めにくい理由

(1) 意思決定の構造が複雑
企業が一般消費者向けや法人向けに営業する場合、購買の意思決定者は比較的明確です。
しかし学校の場合、導入判断には「学校」「教育委員会」「自治体」「文科省指針」など複数の階層が関与します。
例えば、タブレット端末を導入する場合でも、学校側の要望だけでなく、市区町村や都道府県の予算承認が不可欠です。
そのため「現場の先生が欲しいと言ってもすぐ導入できない」「自治体によって採用条件が大きく異なる」といったケースが頻発します。
意思決定の多層構造が、スピード感ある営業を阻む大きな壁となります。
(2) 公費調達による入札・規制の壁
学校市場の多くは税金によって賄われるため、公費調達のルールが適用されます。
特定の企業に直接発注するのではなく、原則として入札や公募の仕組みを経る必要があります。
入札には仕様書作成、価格競争、納期条件などが絡み、慣れていない企業にとっては参入ハードルが高いものです。
また、価格面の競争が激しく、付加価値の高いサービスでも「予算に合わない」という理由で排除されるリスクがあります。
※地方自治法第234条
https://www7b.biglobe.ne.jp/~shiroto-giin/shigikai-shitsumon/chihou-jichihou234and167-2-1.htm
(3) 教育現場特有の文化と抵抗感
学校は営利組織ではなく、教育理念を最優先に考える組織です。
そのため、企業が営業色を前面に出すと「商売っ気が強い」と受け止められ、現場から拒否反応が出ることがあります。
また、教員の多くはICTや外部サービス導入に慣れていない場合も多く、「余計な負担が増えるのではないか」「セキュリティが不安」といった懸念から新しいサービスを敬遠する傾向もあります。
この「文化的抵抗感」は、企業が教育市場に浸透する際の大きな心理的障壁となります。
(4) 予算の硬直性と年度制の制約
学校の予算は原則として年度単位で組まれ、柔軟に運用できません。
たとえ優れた サービスでも「今年度予算に組み込まれていないから導入できない」という事態がしばしば発生します。
さらに、新しいツールを導入する際には数か月単位の審議や承認が必要となり、商談から導入までのリードタイムが非常に長くなるのも特徴です。
民間企業向け営業の感覚で「数週間で受注」というスピード感を持ち込むと、必ず壁にぶつかります。
(5) セキュリティ・個人情報保護の厳格さ
児童・生徒の個人情報を扱うため、学校市場はセキュリティ要件が極めて厳 格です。
クラウドサービスの導入でも「国内サーバーであること」「教育委員会が認めた認証方式であること」などの条件が課されるケースが多々あります。
一般のSaaSやアプリをそのまま教育市場に投入すると、こうした要件を満たせずに採用から外れてしまうことが多いのです。
技術面・運用面での“教育仕様”への最適化が不可欠です。
※文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月改訂)」
https://www.mext.go.jp/content/20250325-mxt_jogai01-100003157_1.pdf
(6) 少子化による市場縮小リスク
一方で「生徒数の減少」という構造的リスクも存在します。
学校数自体はすぐに減らなくても、学級数の減少や統廃合が進み、市場規模が徐々に縮小する可能性があります。